SDGs de はぐくむコラム

新潟SDGsアワード授賞式

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2月13日、第3回新潟SDGsアワードの授賞式に出席しました。一般社団法人地域創生プラットフォームSDGsにいがたが主催となり、SDGsに関する新潟県内の取り組みを表彰するものです。今回は大賞1件、経済・社会・環境の部門ごとに優秀賞、奨励賞、食の新潟国際賞財団特別賞が表彰されました。
大賞には菓子メーカーのカルビーが選ばれました。粟島の大豆「一人娘」の生産を応援するプロジェクトが評価され、ここに至るまでのストーリーがとても素晴らしいと感じました。
年間数百キロしか採れないという貴重な品種の大豆「一人娘」は、日本では粟島と長野県の一部でしか生産されておらず、あまりにも美味しくて人には教えたくないから「いうなよ」という別名がついているという話を受賞式で聞ききました。これだけでも俄然、興味が沸くのですが、消費する我々には見えない課題もあります。この「一人娘」は、生産者の高齢化と後継者不足のため、このままでは生産を維持できず消滅してしまうという危機感があったというのです。せっかくこんなに美味しい大豆と出会えたのに、消滅してしまうのは勿体無いとカルビーが粟島と連携して立ち上げたのが「粟島一人娘プロジェクト」でした。
私が心揺さぶられたのは、そのプロジェクトにファンが増え、勝手に応援隊が立ち上がったということです。企業だけで取り組むのではなく、地域と手をとりあい、その想いに共感して仲間が増えるという展開。大きく広がる仕組みづくりとストーリー性には大賞受賞も頷けました。
もう一件、紹介させてください。奨励賞を受賞した妙高市SDGs普及啓発実行委員会です。同委員会は「妙高市民へのSDGs普及啓発を目的とした実践活動」で受賞しました。

私もこの普及啓発実行委員会に入っています。一年間を通じて妙高市役所のみなさんや委員会メンバー、妙高地域の皆さんと時間を共にすることができました。そして一年をかけて多くの議論を重ねて「妙高市・人と地球が笑顔になるSDGs推進条例」も制定しました。この条例では、市民やコミュニティ、事業者及び市の責務や役割等を明らかにするとともに、市の豊かな自然環境と調和のとれた社会、経済の発展を図り、持続可能な地域社会の実現に資するために、必要な事項を定めています。今振り返っても、委員会のみなさんと条例の表現や文言の一言一句を細かく議論してきた時間が懐かしいです。

去年、決定した「妙高市SDGs未来都市オリジナルロゴマーク」の審査会には素晴らしい作品が集まり、選考委員会では大いに議論したこともよく覚えています。たくさんの作品の中から選んだロゴマークは、二つの手を合わせて妙高市の頭文字「M」を表しています。SDGsの目標と妙高市が目指す「人と自然が共生する持続可能なまちづくり」は、すべてひとりひとりの手から始まる、という想いが込められています。そしてこの想いが形となって妙高市民に広く伝わることを願っています。全てにメッセーがあり、全てにストーリーがあることが重要だということを、ロゴマークを通じて感じています。妙高市ではこれからもSDGsの取り組みが加速することでしょう。私が期待するのは、地域住民の顔が見える取り組みです。

今回、新潟SDGsアワードに出席し、様々な想いをもって取り組んでいる人がいることを改めて感じました。世界で起きているレベルの高い困難な課題を崇高な思いを持って取り組むことは大切です。しかし自分の身の回りにある社会課題を感じながら、自分たちができることから始めるという姿勢も大切です。もしかしたら自分では些細なことと思っていても、どこかの誰かにはとても重要なことかもしれません。最初は小さなことでも、広くつながることで大きなムーブメントになるかもしれません。それが誰かを幸せにする一歩になるかもしれません。受賞されたみなさんは、その一歩を踏み出して形にしている人たちだと思っています。但しそれは特別ではなくて、誰でもできることを教えてくれているのだと思います。そして歩みを止めないことの大切さを教えてくれているのだと思います。みなさんの活動に触れ、私はSDGsには人それぞれの解釈があって良いと思うようになりました。特に日本には日本らしい持続可能な取り組みと仕組みがあります。そこには関わる人の想いもあります。それぞれの人がそれぞれの想いを持って取り組むSDGsマインドのその先には、きっとウェルビーイングがあるのだと思います。

今回受賞されたみなさまです。それぞれの取り組みが、人や地域を守る大切な働きかけであることを強調して深く感謝いたします。

・大賞
カルビー株式会社「カルビー・粟島 一人娘の持続可能な農業モデルへの挑戦」
・経済部門奨励賞
特定非営利活動法人アジアクラフトリンク「植林材から生まれた食器がつなぐ『森づくり』と『名産品づくり』」
・社会部門優秀賞
新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器内科学「新潟県の循環器病診療体制の充実に向      けて-クラウドファンディングによる人材育成を通じた心臓リハビリテーションの活性化-」
株式会社バウハウス「新潟の持続可能な共生社会づくり」
・社会部門奨励賞
妙高市SDGs普及啓発実行委員会「妙高市民へのSDGs普及啓発を目的とした実践活動」
栄中央小学校「アルミ缶回収プロジェクトによるバングラデシュの学校支援〜学年・全  校・保護者・地域へ〜」
敬和学園大学partners「partners」
・環境部門・優秀賞
日本基板ネットワーク「我ら都市鉱山発掘隊!〜パソコンから新しい国内資源循環を創造する〜」
・環境部門奨励賞
高志中等教育学校SDGs推進委員会「『楽しむ』ことでSDGsを達成する」
・食の新潟国際賞財団特別賞
新潟商業高校「ぱくロス〜もったいない!をなくしたい〜」

  

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
4月8日は、新潟大学人文社会・教育科学系准教授 村山敏夫さんです。お楽しみに!

この記事のWRITER

村山 敏夫 (新潟市在住 新潟大学人文社会・教育科学系准教授)

村山 敏夫 (新潟市在住 新潟大学人文社会・教育科学系准教授)

1973年 十日町市生まれ。新潟大学大学院修了。新潟大学SDGs教育推進プロジェクトに取り組み、SDGs未来都市妙高普及啓発実行委員会委員長、新潟市SDGsロゴマーク選考会委員長を担当。出雲崎町、上越市など地域と連携した教育・健康・パートナーシップの仕組みづくりも担う。
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