SDGs de はぐくむコラム

PARTY体操から考える総合知

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先日、内閣府総合知ワークショップにて研究室の取り組みを報告しました。
内閣府では、第6期科学技術・イノベーション基本計画を踏まえ、「総合知」の活用推進・情報収集などを目的として総合知キャラバンが実施されているところです。とはいっても総合知とはなんのことやらという印象が普通の感覚です。

総合知とは、“多様な「知」が集い、新たな価値を創出する「知の活力」を生むこと”として、内閣府は以下のようにまとめています。

①多様な「知」が集うとは、属する組織の「矩」を超え、専門領域の枠にとらわれない多様な「知」が集うこと。
②新たな価値を創出するとは、安全・安⼼の確保とWell-beingの最大化に向けた未来像を描くだけでなく、社会実装に向けた具体的な手段も見出し、社会の変革をもたらすこと。

それでは今回、私たちの研究室がなぜワークショップに選出されたかというと、“体操の開発”でした。もっと正確に言うと、体操の開発を通じて異なる分野の様々な人たちと繋がりながら取り組んでいることが理由にあります。

その体操の名は“PARTY体操”。

昨年10月2日に開催されたBSNキッズフェスティバル2022でもステージでお披露目させて頂きましたが、コロナ禍によって身体を動かす機会が減った子どもたちに運動の楽しさをみんなで感じてもらおうという想いで、学生たちがタオルを使ったキッズ体操を作成し普及に取り組んでいるところです。

この体操は音楽プロデューサーのYANAGIMANさんと、かりゆし58のボーカル前川真悟さんから曲と歌を担当して頂き、楽しく大きく身体を動かしたくなる仕組みを作りました。また、体操では専用のタオルを利用します。これは岡山県高野町にて明治10年に誕生した再織(さいおり)という伝統技術を用いた手法でつくるタオルです。今では日本に5台しか残っていないという編機によって職人の方々から丁寧に体操専用タオルを手作りしてもらいました。運動と音楽と伝統技術の融合によって生まれた体操だということです。

本コラムではPARTY体操のキッズ版ができるまでをお伝えしたいと思いますが、この体操は楽しいだけの体操ではなく、子どもたちの発育発達段階で重要な動きを加えながらどんな動きがどこの筋肉にどう作用しているかなどを学生たちが筋電図で測定しながらみんなで作り上げていったものです。筋電図というのも馴染みの薄い言葉かもしれませんが、身体を動かしたときに筋肉から生じる電気を測ることを筋電図測定と言って、測定した筋肉がどのくらい活動しているかを知ることができます。

PARTY体操には大人版もあるのですが、キッズ版は跳んだり寝転んだり、回ったりしゃがんだりと、あらゆる動きが組み込まれています。そしてそれぞれの動きをどんな順番で行うのが楽しさや効果につながるかもみんなで考えていきました。普段は自動車の運転姿勢を研究する学生や子どもの行動変容やSTEAM教育について研究する学生も体操の開発に加わりました。みんなで何度も繰り返して順番を変えたり動きを変えたりしてようやくできたのがPARTY体操キッズです。作成に関わった学生たちはこの体操を続けたらダイエットになったと言っていましたので運動量も高いようです。

完成した体操は県内だけでなく全国各地でお披露目しています。新潟市西区の翠松保育園さんでは運動会でも実演しました。運動会に参加したお父さんやお母さんと一緒に体操ができたことは子どもたちも思い出深い時間になったと思いますし、体操を通じて“子ども-大学生-お父さんお母さん”と世代を超えた和やかな交流の時間が生まれたことは副次的な作用でした。新潟市だけでなく、糸魚川市でも実演できましたし、3月には妙高市のSDGsイベントでも実演できる機会を頂きました。広がったのは口伝えでした。面白い体操やっているようだよと。こうやって人から人への伝搬によって、たくさんの地域の方々と関われることが嬉しいです。

宮城県女川町では女川町第四保育所のみなさんと一緒に体操をしました。音楽に合わせて身体を動かす子どもたちの表情がイキイキしていたことが印象的だったと、出向いてくれた学生たちが話していました。女川町で実演できたのも、たまたま学生と女川町で活動されている方々との出会いからでした。おそらく学生たちの熱意に共感してもらっての実現だったと思います。東京ではこれまで3回、保育園の先生を対象にして体操を含めた子どもの健康についての勉強会を開催し、毎回熱意ある先生からご参加頂きました。それがご縁となって交流も生まれました。体操から広がる人とのつながりも感じているところですし、そのつながりが広がって体操にも関わる人が増えているという物語の途中です。

本コラムでは、様々な人たちと作り育てている体操を題材に取り上げながら、冒頭で触れた総合知について考えをめぐらせました。ここで伝えたいのは、体操をつくったことではなくて、体操をつくるという場面に大勢の人たちから参加してもらっているということです。そもそも中心となって活動している学生たちでさえ、自分の研究テーマは体操ではありません。ただ、それぞれの研究テーマで勉強していることが体操づくりのどこかに関連しているから協力できるということです。そして大人も一緒です。音楽をつくることが専門の大人。タオルをつくることが専門の大人。それぞれ専門は違っていても目的が一緒だったりすると仲間になれることがあるということです。私が考える総合知とはそこにあると思っています。お互いを補える相互補完は大切です。お互いの得意とすること、苦手とすることを共有しながらみんなで何かをつくりあげていく社会の在り方を、私は体操づくりを通じて学ばせてもらっているところです。

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。

この記事のWRITER

村山 敏夫 (新潟市在住 新潟大学人文社会・教育科学系准教授)

村山 敏夫 (新潟市在住 新潟大学人文社会・教育科学系准教授)

1973年 十日町市生まれ。新潟大学工学部卒業。新潟大学SDGs教育推進プロジェクトに取り組み、SDGs未来都市妙高オリジナルロゴマーク審査会委員長を担当。出雲崎町、上越市など地域と連携した教育・健康・パートナーシップの仕組みづくりも担う。第2回にいがたSDGsアワード奨励賞受賞。
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