テキストが“話し出す”時代が、ついに日本語でも始まった――。
Googleは2024年4月30日、AIリサーチツール「NotebookLM」の既存機能「音声概要(Audio
Overview)」において、日本語での出力対応を開始しました。この機能は、ユーザーがアップロードした資料をもとに、AIが内容を要約し、音声でポッドキャストのように紹介してくれるというものです。
NotebookLMとは、Googleの生成AI「Gemini」を活用し、文書やウェブ上の情報、動画などを読み込み、ユーザーの質問に答えたり、内容を要約・整理したりしてくれるAIリサーチアシスタントです。ChatGPTなどの汎用的な生成AIと似ている面もありますが、NotebookLMは指定した資料をベースに応答するため、より信頼性の高い情報整理が期待できます。
一方で、ChatGPTのような「その場でなんでも聞ける」手軽さに比べると、対象資料の準備や設定に若干の手間がかかる点で、ややハードルが高く感じられるかもしれません。
音声で伝わる、資料の新しいかたち
今回、日本語にも対応した「音声概要」機能では、アップロードした資料をもとに、AIがラジオ番組のようなスタイルで内容を紹介してくれます。驚くべきはその表現形式です。単なる読み上げではなく、2人の“出演者”による掛け合いという形で、資料の要点や背景をテンポよく会話形式で届けてくれます。
実際に、私は「立石勇生 SUNNY SIDE」というラジオ番組について、公式ページやInstagramの情報をNotebookLMに読み込ませ、この音声概要機能で内容を生成してみました。AIによる読み上げでは、立石さんの名前の読み方に誤りがありましたが、それ以外の番組の内容紹介や構成意図の要約は非常に的確でした。まさに「聞いてわかる要約」です。
📎(参考音声)「立石勇生 SUNNY SIDE」について、BSN作成の情報に基づいて、Notebook LMが生成した音声
資料を文章として読むだけでは気づかない情報のつながりや背景が、音声化されることで、立体的に理解できるようになる──そんな印象を受けました。
学びと表現を変える音声要約の力
NotebookLMは現在、無料で提供されており、利用は18歳以上に限定されています。ただし、NotebookLMの基盤となっている生成AI「Gemini」については、保護者の管理のもとで13歳未満のユーザーにも利用可能になると発表されており、今後NotebookLMでも対象年齢の見直しが行われる可能性があります。教育現場での活用を見据える上でも、この動向には注目が集まります。
この技術が教育にもたらす影響は小さくありません。たとえば、文章を読解し、要点をまとめ、自分の考えを述べるというプロセスは、学習の基本とされてきました。その中でも「要約」は重要なステップです。そこをAIが代行するようになることで、学びの前提が大きく変わるかもしれません。
一方で、これは“脅威”ではなく、“拡張”と捉えることもできます。AIによって文章が音声化されることで、自分の書いた内容を第三者的に「聞いてみる」ことができるのです。実際、自分が書いた文章をもとにAIが生成したポッドキャストがわかりにくい場合、それは元の文章自体に課題がある可能性も示唆します。
また、誰かに自分の考えを伝えるとき、どのような言葉を選び、どんな順序で語るべきか。AIがつくる音声概要は、“話して伝える”ための構成例としても活用できるでしょう。自分の表現を見直し、他者に伝わる言葉へと磨いていくツールとして、さまざまな可能性が見えてきます。
これからの情報との付き合い方、そして自分自身の表現力を育てる手段として、この“聞ける資料”の力をどう使っていくか。今後の活用に大いに期待したいところです。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。5月17日は、新潟市在住 敬和学園大学人文学部国際文化学科教授の一戸信哉さんです。お楽しみに!