来月で56歳にもなるというのに、いまだに学校の宿題を忘れるとか、テスト当日と知らずに学校で途方に暮れる…なんて夢を見る。
小中学校から高校まで、特に学校が嫌いだったわけではないが、そんな僕でも学校という場所には、変な緊張を感じる。なんだかピシッと背筋が伸びるような、きちんとしなくちゃいけないといった意識が勝手に働いてしまうのだ。
9月から、ちょうど地元の上越市で展覧会を開催していることもあって、普段はあまり誘われない小学校や中学校から、ワークショップや講演の依頼をいくつか受けた。
「むむ、小学校かぁ」、「中学校に行くのか…」そんな不安と緊張が、少しだけ頭をよぎってしまう。
最初は、十日町の吉田小学校でのワークショップだった。創立150周年を迎えるこの小学校の生徒とワークショップ形式で絵を描き、それで150周年の記念ボードを作るというのが依頼だった。みんなと一緒に絵を描けたらいいのだが、時間や進行を考えると難しい。僕が描いたうさぎの形を事前に学校に送り、画用紙をウサギ型に切ってもらい、そこに絵をつけてもらうことにした。
今回のテーマは「吉田小学校に現れた今までに見たこともないウサギを描いてみよう」だ。
描いてもらうと言っても紙の形が、すでに僕が描いたウサギになっているから、模様のように絵をつけるだけでもいい。だから絵が苦手という子どもたちでも無理なく手が動くのではと考えた。それに僕が描いたウサギの形だから、特別なコラボレーションということにもなる。
吉田小学校は生徒数も少なく、先生や生徒、保護者の方同士の距離感も近く、とてもアットホームな雰囲気だった。そのおかげか、どうしても絵が描けないという生徒もなく、みんなそれぞれ自由な発想で、オリジナルのウサギを描いてくれた。
せっかくこの吉田小学校に現れた新種のうさぎだったから、描き終えた生徒から順に、「こんなところにウサギがいた」と思う場所で、写真撮影をお願いした。描き終えた絵とカメラ付きのタブレットを持って、みんなが校内やグラウンドなどに出かけて行った。ウサギをグランドの木に立てかけ撮影したり、草原の中や、図書室や体育館など、校内の様々な場所でウサギを撮影した写真も、また想像力溢れる素敵な作品になった。
日常的にスマホやタブレットで写真を撮ることに慣れている子どもたちこその、楽しい作品ばかりだった。
数日後、今度は上越市の東頚中学校で講演を行った。
こちらも生徒数の少ない中学で、アットホームな雰囲気なのだが、みんなが真剣に話を聞いてくれている様子が、話しているこちらにも伝わってきた。僕の過去の作品などを見てもらいながら話し、せっかくだからとその日は最後に生徒からの質問のコーナーを作ってもらった。最近は大学の授業でも聞きたいことはあっても、その場で聞くことが恥ずかしいという生徒が多いのが現状だ。でも東頚中学校では様々な角度からたくさんの質問をしてくれて盛り上がった。中には収入についてなどドキッとする質問もあったが、僕が描いた絵や特にキャラクターが気になる生徒も多くいて、そんな質問に答たりするのは楽しい時間だった。
最初の吉田小学校でもそうだったが、ここでもBSNのキャラクター「ハレッタ」は人気で、直接ハレッタが好きだと言われると自分のことのように嬉しくなった。
今回は先生として小学校、中学校の授業に参加した。一瞬、こんな雰囲気の中で毎日過ごせるのならもう一回生徒になってもいいかなと思ってしまったが、テストや宿題のことなど考えると、もう学生生活は充分だと思った。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
11月16日は、「ハレッタ」のキャラクターデザインを手がけた、イラストレーターでアートディレクターの大塚いちおさんです。お楽しみに!