SDGs de はぐくむコラム

東京オリンピック・パラリンピック

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東京オリンピック,パラリンピックが終了しました。

オリンピックは 金27、銀14、銅17、の計58。 パラリンピックは 金13、銀15、銅23、の計51。こんなにメダルが取れるとは,凄いな!と感心してしまいます。

本来ならば2020年に開催されるはずが、1年延期後に開催されたことで365日、8760時間という時間ができてしまいました。この時間が選手にとって吉と出るか凶と出るかは、結果論でしか話せません。当初は2020年夏にピークを合わせるだけで良かったはずなのに、2020年3月24日に開催延期が発表されてからの1年間の過ごし方が選手にとっては難しい時間となりました。モチベーションの維持は想像を遙かに超える苦痛や葛藤に苛まれたことと思います。

オリンピックでは、そんな状況においても1年間で成長した選手が数多くいました。メダリストの低年齢化も今大会の特徴です。競技特性(出場年齢制限を設けていない種目など)にもよりますが10代の選手に顕著な成績が認められました。

結果からいうと、オリンピックにピークを合わせることができた人(卓球・水泳・柔道・バスケ・フェンシングなど)、成長が間に合った人(体操競技・スケートボードなど)がメダリストになったように考えらます。

メダルを取った種目や人だけをクローズアップしてしまいがちですが、4年に一度のオリンピック・パラリンピックに出場することがとてつもなく「凄い!」事であることは言うまでもありません。選ばれしオリンピアン・パラリンピアンに惜しみない賛辞を送って欲しいです。「あっぱれ!」

皆さんはこの夏のオリンピック・パラリンピックをどのように楽しみましたか。

スポーツや運動の楽しみ方には「する」「観る」「読む」「聞く」などがあります。

それぞれを簡単に言うと

「する」スポーツは、自分で行うスポーツです。競技に打ち込んだり、健康志向で行ったりするスポーツです。過去の「する」スポーツは、「したことのある」スポーツ経験として脳に記憶されます。

「観る」スポーツは、観戦や映像視聴をするスポーツです。テレビや競技場に行って、オリンピック・パラリンピックやひいきのクラブ(アルビレックス新潟など),お子さんの大会や練習を観戦したり応援したりするスポーツです。

「読む」スポーツは、スポーツ新聞やネットニュースなどの記事、スポーツ種目別専門雑誌や一般誌、ノンフィクション小説などを読んで、結果を確認したり文字からスポーツシーンやドラマを想像したりするスポーツです。

「聞く」スポーツは、ラジオなどの実況中継などを聞いて楽しむスポーツです。想像を膨らませながら聞くことで臨場感が得られるスポーツです。

東京オリンピックでは、「観る」スポーツとして複数のチャンネルで一日中放映されていました。私は観戦する種目を選択できず、テレビを2画面にしたり,もう1台のテレビを駆使したりして決定的瞬間を見逃すまいと苦労しました。その甲斐あって多くの種目の決定的シーンや感動的シーンを見ることができました。

しかし困ったことが・・・。

競技経験や授業で「したことのある」スポーツを観戦していると、あたかも自分がプレイしているかのように脳が記憶を元に勝手に活性化して働き始めます。バスケットボール・陸上競技・テニス・バドミントン・卓球の試合は,「すげ〜」「いけ〜」「ヨッシャ」と声を出したり、ボールコースを読んでリターンの球種を考えたり,スタートの時に息を止めたりしていました。

夕方の放映ならまだしも,夜9時台の競技が多くて試合に夢中になり、興奮してアドレナリンが出たためか、なかなか寝付けませんでした。寝ても夢の中で試合の続きをしていて、朝起きて疲労感があったのは一日や二日ではありません。身体が疲れたというより脳が疲れた感じが不思議に思えました。

「したことのある」スポーツや運動は、脳に感覚として記憶されています。そのため、しばらくやっていなくても、記憶を元に「する」スポーツや運動として呼び戻すことができます。例えば,自転車は一度乗れるようになると年単位で乗っていなくてもすぐに乗れます。ペダルを漕ぐ操作と自転車のバランスを取ることを脳が覚えているためです。

走ることもそうです。普段走っていなくても、走ることはできます。

しかし、普段「全力」すなわち「出せる限りの力」で走っていない人が突然「全力」で走ったら、悲劇が生まれます。「全力」で走るとき、脳は過去の良い時(10代かな)の記憶で身体を動かそうとします。でも身体は、30代・40代・50代と加齢によって筋肉量も減り、体脂肪も増え、その脳からの指令を消化できず,アタフタしてしまいます。

どんな場面をイメージしているかというと、幼稚園・保育所、学校の運動会での親子競技…。ゴール手前で脚がもつれて転んでしまう場面がまさにそうです。

さて、これから秋に行われる運動会に親子競技があれば、前日までにやっておいて欲しいことは、普段よりも速いペースで歩くか走ってください。これだけでも感覚が戻ります。

オリンピックに刺激を受けて、「する」スポーツを考えている皆さん。

お子さんは、どんどん新しいことにチャレンジしてください。

大人は最初から「全力」ではなく、徐々に「全力」に近づけていくようにしてください。

私ですか…?サーフィンがしたいです。

 

この記事のWRITER

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

1964年、三条市生まれ。日本体育大学大学院修了【体育学修士】、新潟大学大学院博士後期課程修了【博士(教育学)】。子どもの身体発育発達学、運動遊び、健康教育を専門に研究。新潟市寺山公園子育て交流施設「い〜てらす」低学年広場を監修するなど、遊びの中で運動を身につける「遊育」を推奨。現在:人間生活学部子ども学科長。日本体育・スポーツ・健康学会、日本発育発達学会などに所属。
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