「女だから」「男だから」という理由で、何かをあきらめたり、何かを強いられたりした経験はありますか。
先日、高校で実施した「ジェンダー」に関する授業での問いかけです。ある生徒は、「先生に『重いものは男子が持て』と言われた」と答えました。また、ある生徒は、「おばあちゃんがよく『女の子だからおしとやかにしなさい』と言う」と答えました。みなさんはどうですか。
授業の資料を作成するために、多様な世代約 160 名にアンケート形式で同じ質問をしました。すると、このような回答がありました。
「応援団⻑は男と決められていたために、団⻑になるのを諦めた」(20 代女性)
「職場の飲み会では、女性がサーブすることが当然、という雰囲気」(40 代女性)
「女の子は大学に行かなくてよいと親に言われた」(50 代女性複数人)
「男だから家を守らないと、と祖母や親戚に言われる」(20 代、30 代、40 代男性)
「そのような経験はない」と答えた人も複数いましたが、協力いただいた方々の回答からは、学校生活や職場、家庭の中、さらには自己のキャリア選択にも「性別による差(ジェンダー不平等)」があることがわかりました。こうした不平等や無意識の偏見はなぜ起こるのでしょう。
高校生たちは、自分自身が思っていた以上に実社会の中で性別が役割に影響を与えていることを知り、さまざまな反応を見せました。共感(わかる)よりも驚き(えっ!信じられない)や疑問(なんでだろう)の声の方が大きいことが印象的でした。子育てや介護のことが話題に挙がった際には、「女だから(男だから)○○しなければならない」ではなく、「役割を決めず協力することが当たり前でしょう」といったような意見が教室内のほとんどだったことから、今の高校生たちは私が 10 代だった頃よりもはるかに「女だから、男だから」という枠にとらわれていないようにも受け取ることができました。
授業の後半では、「ジェンダー平等の実現に向けて」をテーマに、誰が、どんなことに取り組めばよいのか、ということを班で話し合いました。話し合いの中では、政治や学校教育に向けた提言を唱えた生徒もいました。ジェンダー問題に自分事として向き合い、真剣に話し合う高校生の姿から、「よりよい未来」は自分自身が行動することでつくられていくということを実感しました。
一方、社会もまた少しずつ変わってきています。公務員をしている私の同級生(男性)は、昨年育休を取得しました。男性の育休取得の実情について尋ねると、「産まれる前から予め、管理職に自分は育休を取得するつもりだと話していた。職員も多いから一人欠けてもフォローできる体制がある。加えて、福利厚生がしっかりしていて、収入の面で困らなかったことが助かった」と話してくれました。自分の選択を後押ししてもらえる職場環境は、ジェンダー平等の実現に向けた大事な点だと感じました。
また、建設業に就職した友人(20 代女性)は、「今、建設ディレクターという新しい職域がある。建設現場の事務作業的な仕事を担うが、女性が妊娠や育児を経験しても、仕事を辞めずに現場で活躍できる。建設業界でも、だんだんと女性のライフスタイルと仕事を両立できるような仕組みができている」と話してくれました。性別によって職業が決められたり、ライフイベントによってキャリアを諦めたりするのではなく、誰もがやりたいことを生き方に合わせてできる社会になることが理想です。そのような環境整備が県内でも進んできていることを知り、希望がもてました。
終わりに、授業を受けた高校生の感想(一部)を紹介します。
「性別で人を差別せず、どんな人でも認められる大人になりたい。自分が決めたことを性別などを理由にあきらめたくない。そのために、世界の現状をまず知って、向き合いたい」
自分の選択が未来をつくります。私も含め大人たちには、子どもたち・若者たちがもつ「未来をつくる力」を伸ばす責任があると感じています。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
3月4日は、にいがたNGOネットワーク国際教育研究会 RING 企画副委員長の関 愛さんです。お楽しみに!