SDGs de はぐくむコラム

幼児期に身につけたい “36(+1)”の基本動作

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昨年の12月下旬に続き、1月25日に”10年に一度”の最強寒波が襲来!急遽、大学の授業は対面授業からオンライン授業に切り替わりました。考えてみれば3年前の新型コロナ感染拡大に伴い、急速に広まったZoomなどのオンラインが、突然の授業や会議の変更に対応できています。Zoom等のオンラインは日常的に会議で使用しており、コロナ感染が収束したとしても継続されることになるでしょう。
唯一、実技を伴う授業は対面で行う事の効果が大きいことを再認識することができました。大学では3年ぶりにスキー&スノーボードの実習を行い、新型コロナ感染拡大前の日常に、また一歩近づき感慨深いものがありました。
3年前のコラム雪!雪!雪で遊ぼう…遅いかな?
今一度読み直すと「日常がそこにはあったな」と思います。

文部科学省の調査「体力向上の基礎を培うための幼児期における実践活動の在り方に関する調査研究報告書」では、外遊びをする時間が長い幼児ほど体力が高い傾向がありました。しかし、4割を超える幼児の外遊びをする時間は1日1時間未満との結果でした。
そこで、「幼児期運動指針ガイドブック」では、多くの幼児が体を動かす実現可能な時間として、わかりやすい指標を立てる必要から
「毎日、合計60分以上」体を動かすことが望ましいことを目安として示しています。
また、遊びや運動を通して幼児期の体力向上に必要と考えられる「36(+1)の基本動作」を身につけることを期待しています。
基本動作には体のバランスをとる動き(平衡系動作)9、体を移動する動き(移動系動作)9、物を操作する動き(操作系動作)18(+1)があります。物を操作する動き(操作系動作)18(+1)の+1は、「まわす」を入れました。そして、基本動作36(+1)には98の細目もあり、動きを細かく分類していることが分かります。

体のバランスをとる動き(平衡系動作)

体を移動する動き(移動系動作)

物を操作する動き(操作系動作)

出典:スポーツサービス ミズノ 幼少期に身に付けたい36の基本動作(2022.4.21)

何故、外遊びをする時間が長い幼児ほど体力が高い傾向にあるのでしょうか?

外遊びのできる環境は、公園、幼稚園、保育所、こども園が挙げられます。広い空間の中には平らな空間、築山、砂場、固定遊具などがあります。この空間で遊ぶことが体力向上の基礎を培います。

特に固定遊具で遊ぶことは、重要な意味を持っています。

今年度、ゼミ生が卒業研究にまとめた一部をご紹介します。
新潟市公園マップと新潟市幼稚園一覧に掲載されている、新潟市中央区・東区の公園9カ所、公立・私立幼稚園7カ所の園庭にある固定遊具を写真に撮り、その固定遊具で遊ぶ時に必要な「36(+1)の基本動作」を分類しました。
公園の総遊具数79、幼稚園の総遊具数53ありました。その内、公園と幼稚園に共通して設置されていたのは複合遊具、ブランコ、滑り台など10遊具、公園のみに設置されていたのはロッキング遊具、シーソー、渡る遊具など18遊具、幼稚園のみに設置されていたのはジャングルジム、タイコ橋など10遊具でした。

複合遊具

ロッキング遊具

タイコ橋

固定遊具で遊ぶ時に多少の差はありますが、24(青色)の基本動作を用いていました。残り13(赤色)の基本動作を保育の活動での遊びにとりいれることで、36(+1)の基本動作全てを経験することができ、多様な動きを獲得することができると考えられる。としています。

「36(+1)の基本動作」
「体のバランスをとる動き(平衡系動作)」…たつおきるまわるくむわたるぶらさがるさかだちするのるうく
「体を移動する動き(移動系動作)」…あるくはしるはねるすべるとぶのぼるくぐるはうおよぐ
「物を操作する動き(操作系動作)」…もつささえるはこぶおすおさえるこぐつかむあてるとるわたすつむほるふるなげるうつけるひくたおす、(まわす

外にある遊具を使って遊ぶだけで、多くの基本動作を経験し身につけることが可能となります。また、年齢が上がるに従って遊びが高度になると基本動作の重要度にも変化が見られます。
例えば、ブランコは最初の内、落ちないように「つかむ」事に集中します。慣れてくると「ける」動作が加わり揺れを大きくし、楽しむことができます。

外遊びをする時間が長い幼児ほど「体力は高い傾向」があるのは、園にある固定遊具の遊びを楽しんでいるからなのかもしれません。

新潟の冬は外にある固定遊具でなかなか遊べませんが、雪という天からの贈り物を遊び道具として大いに活用してください。

私はスキーとスノーボードで滑る感覚を楽しみます!

 

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
2月11日は、新潟県立大学教授の伊藤巨志さんです。お楽しみに!

この記事のWRITER

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

1964年、三条市生まれ。日本体育大学大学院修了【体育学修士】、新潟大学大学院博士後期課程修了【博士(教育学)】。子どもの身体発育発達学、運動遊び、健康教育を専門に研究。新潟市寺山公園子育て交流施設「い〜てらす」低学年広場を監修するなど、遊びの中で運動を身につける「遊育」を推奨。現在:人間生活学部子ども学科長。日本体育・スポーツ・健康学会、日本発育発達学会などに所属。
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