相変わらず東京と上越を行ったり来たりしている。上越での移動を考えると車で移動の時も多いが、新幹線移動はとても快適だ。北陸新幹線で東京駅から上越妙高駅までおよそ2時間。好きな音楽を聴きながら、窓の外の風景を眺めているとその土地の風景や季節の変化もあって楽しい。…と、思うと風景が、あれ、トンネル。そしてまたトンネル。そう上越妙高駅付近はトンネルが多い…。実はそんなところから「もぐら」のキャラクター「ウェルモ」は生まれた。
「ウェルモ」とは上越妙高駅お出迎えキャラクターで、僕がデザインしたキャラクターのことだ。ことの始まりは北陸新幹線開業直前、ちょうど10年と少し前にさかのぼる。上越市役所の方から、「上越妙高駅開業まで熱心にボランティア活動をしてくれていた地元の方がたくさんいる。その皆さんと一緒に開業当日に新幹線をお出迎えしたいのだが、何かデザインをお願いしたい。」とのことだった。上越市出身でありながら、それまで仕事として地元との関わりがなかったので、それはとても嬉しいお誘いだった。
上越といえば日本海や桜、雪や米など、もちろん頭に浮かぶ。だが、そのとき僕はせっかくならもっとオリジナリティあるものを作りたいと思った。そこで浮かんだのが、トンネルの中を走る新幹線に似た「もぐら」のキャラクターだった。土の中からたまたま顔を出した「もぐら」が自分に似た新幹線に会ってびっくりする。地上にはまだまだ知らないものがたくさんあると、それから上越地方をうろうろしながら、時には美味しいものやお酒も楽しむ、そんなストーリーがどんどん浮かんだ。

横断幕制作ワークショップの様子
まず、キャラクターが生まれてから最初の仕事は、開業当日に新幹線をお出迎えするための横断幕作りだった。ベースとなる横長の大きな横断幕のデザインをし、地元のみんなで色を塗り仕上げた。それまで子ども向けのワークショップの経験は多かったが、ここまで年齢層の広いワークショップは初めて。大人から子どもまでみんなで一緒にワイワイ仕上げる作業はとても楽しい時間だった。

横断幕制作ワークショップ
そして、いざ北陸新幹線開業当日。出来立てホヤホヤの上越妙高駅に僕らは集合した。集合は朝5時過ぎ。3月の早朝、建物の中でも、ものすごく冷えて寒い。みんなが集まったところで、せっかくなら掛け声を決めようということになった。「ようこそ!ようこそ!上越妙高駅へ!」と僕がその場で決めた。そしてみんなでワクワクしながら朝一番の新幹線が到着する駅のホームへ向かった。
真新しいホームに新幹線が到着し、横断幕とともに「ようこそ!ようこそ!上越妙高駅へ!」と大きな掛け声を上げながら新幹線のドアが開くのを待った…。
だが、新幹線からは誰も降りてこない。2番目の新幹線、3番目の新幹線と同じように横断幕と掛け声でお出迎えしたが、結果は同じ。だんだんその掛け声も、横断幕を持つ手も元気がなくなっていった。

人が降りてこないホーム…
後日、振り返ると、新幹線開業の当日の乗客のほとんどは終点の金沢までその新幹線に乗っていて、途中の上越妙高駅で下車する人はいないのがその理由だった。その後は、もちろん、シーズンごとにたくさんの人が利用する駅になったのだが、開業当日は悔しさとほんのり寂しさが残る思い出の日になった。
そんな上越妙高駅も今年の3月14日に開業10周年を迎えた。まだまだこれからも上越の魅力を伝えようと頑張ってお出迎え中の「ウェルモ」に大きな仕事の依頼が来た。10周年の記念駅弁「上越妙高ありが10(とう)うまさ満載弁当」の掛け紙のデザインに、なんとウェルモが抜擢された。僕は、このお弁当を「もぐら」なりに頑張って作ろうとしている様子の絵を描きおこした。9月までの半年間上越妙高駅でこのお弁当は販売されている。みなさん、ぜひ「ようこそ!ようこそ!上越妙高駅へ!」
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
4月5日は、「ハレッタ」のキャラクターデザインを手がけた、イラストレーターでアートディレクターの大塚いちおさんです。お楽しみに!