SDGs de はぐくむコラム

食育の主役

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『食育』という言葉が様々な場面で使われるようになり、昨年のはぐくむコラムでは【無理なく気軽に食育!】と題して親子の『食育』についてふれました。
今回は、教育現場での『食育』についてお話をしたいと思います。

子どもたちへの『食育』を実施する時、支援する専門家や周りの大人の考えが中心となることは少なくありません。本当に子どもたち自身が興味関心を持ち、主体となって動こうとしているか、活動内容の計画・実施・評価に子ども達も関わっているかが重要で、支援者はその環境を用意できるかが大切です。
昨年、複数の小学校や中学校で『食育』講演や授業を担当させていただき、その中の2校の魅力的な取り組みをご紹介したいと思います

1校目は、新潟大学附属長岡小学校5年生の「そうせい」学習活動で【米粉の良さを広めよう】と題し、新潟県の食料自給率向上や農業が抱える課題に迫りながら、米粉を主教材として取り上げる授業に関わらせていただきました。

この授業では、子どもたちが米粉の特長を学んだ後、米粉料理を考案し、実際に試作を繰り返してオリジナルレシピを完成させていきます。最初に子どもたちが考えたレシピを見た時は、想像を超える驚きもありましたが、子どもらしいアイディアが新鮮で、どんな料理ができるのかとても楽しみでした。

レシピを完成させるまでの過程では、小麦粉と米粉の違いに悩む様子や、米粉生地の扱い方が分からず、イメージした食感や味にならないなど、たくさんの壁があったようですが、失敗した時の「なぜ?」「どうして?」を追求しながら再チャレンジする姿や、おいしく調理できた時の「先生も食べてみて!」と笑顔で料理をとり分けてくれる姿に感動し、生きる力に繋がる『食育』だと感じました。

2校目は、小国保小中学合同学校保健委員会の食育講演にお声がけいただき、【毎日の元気は朝ごはんから】と題して、小学校高学年生~中学生、保護者、保育園・教職員向けにお話しをさせていただきました。子どもたちと保護者が一緒に話を聴いて共通認識をもつことで、家庭でも「講演でこう言っていたよね」「明日の朝食どうしようか」等の会話や、自分自身と家族の食生活に目を向けるきっかけとなったようです。

そして、講演だけで終わらないのがこの取り組みの魅力!栄養教諭の先生を中心に企画されたのが、講演に参加した子どもたちから“簡単にできる朝食レシピ”を考案してもらうというもの。主食をごはん・パン・お餅の部門に分け、栄養バランスも考慮しながら、短時間でできる簡単な朝食レシピを作成してもらいました。このレシピは、学校の保健だよりやホームページで公開するだけではなく、特に優れたレシピを私の方から選定・講評をする機会までいただき、子どもたちの豊かで素敵な発想に驚きました。

子どもにとっての食事作りは、チャレンジする楽しさ、完成させる達成感、誰かに食べてもらう喜び等たくさんのメリットがあり、失敗や問題を解決して成功体験を重ねることで自己肯定感を高めていきます。また、これらの経験は、この先ひとり立ちをした時や家族を持った時に必ず生かされていきます。

そして、教育現場の『食育』の主体は子どもであることを、あらためて今回の経験で学ばせていただきました。私も支援者の一人として、子ども達の目がキラキラする“場作り”に力を入れていきたいと思います。

 

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
3月9日は、管理栄養士のますがたみきさんです。お楽しみに!

この記事のWRITER

ますがたみき(長岡市在住・管理栄養士)

ますがたみき(長岡市在住・管理栄養士)

1981年 長岡市生まれ 短期大学専攻科卒業後、長岡赤十字病院で管理栄養士として6年間勤務。子ども達の成長と母親の育児に寄り添うため自身が考案した「食能」をキーワードに「はれいろごはん」を設立し、おやつ開発や料理教室を展開。2児の母親。 長岡市委託事業として乳幼児の健診・栄養相談・特定保健指導なども担う。
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