SDGs de はぐくむコラム

あなたの分身が自由に動き出す——Sora2 Cameo機能と映像の新時代

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OpenAI が、動画生成モデル Sora がバージョン2になったと、2025年9月30日に発表しました。同時に、Sora2で生成した動画を使ったSNSアプリ「Sora」をiPhone版でリリースしました。これまでとは異なるレベルの完成度で、異なるカットを組み合わせた動画を生成するとのことで、大きな衝撃を持って受け取られました。Androidユーザーの私は、少し乗り遅れてしまいましたが、11月5日にAndroidバージョンもリリースされたため、早速試してみています。

今回のアップデートの目玉は、「Cameo(カメオ)」と呼ばれる、生成AIの中に自分の「分身」を登場させる機能です。Soraのアプリで撮影し、その写真をベースに人物を登場させるので、自分だけでなく、友人などを撮影して登場させることも可能です。

これまでも、自分を生成AI動画に登場させる方法はありましたが、今回はかなりリアリティも自由度も高いと言われたので、私自身をこの機能を用いてさまざまな実験映像を制作してみました。AIの中に“もうひとりの自分”が現れ、15秒ほどの短い映像とはいえ、ほぼ思い描いた通りの動き・表情で登場することに驚かされます。以下、敬和学園大学で自分が所属するコースを紹介する短い動画として、日本語版と英語版、さまざまな動画を作ってみています。以下作例です。

萬代橋の上でダンスを踊る動画

DJ としてステージを盛り上がる動画

信濃川下流をクルーザーに乗って撮影する動画

ネパールを学生と訪れて、撮影しながら文化交流する動画

こうして並べてみると、いつもの新潟の風景から海外の場面まで、AIが仮想空間として再構築し、その中に自分が自然に溶け込んで登場します。新潟については、「萬代橋」や「信濃川」といったシーンを日本語で指定しています。Sora2によってどの程度“本物らしく”再現されているか、ぜひ確認してみてください。

地元・新潟を知る方なら、「あ、ここはちょっと違う」「この曲線は確かに萬代橋らしい」といった気づきがあると思います。逆にネパールの風景については、現地に詳しい人でなければ、ほとんど見つからないかもしれません。日本語と英語の発音も、間違いはときどきありますが、読み方そのものは、人間が読んだものとの区別はほとんど不可能になりつつあります。

Cameo機能では、自分の分身データをどこまで共有するかを細かく設定できます。私は現在、自分の設定した分身を使えるのは自分だけに制限しています。友人その他自分以外をどの程度作るべきなのかも、まだ判断に迷っています。まして、不用意に友人のCameoを作り、本人の意に反するような動画を作ってしまったらどうなのか。少し考えると、リスクがかなりあることにも気づきます。Cameo機能だけでなく、それ以外の映像もかなり制度が高く、今であればクマに関する捏造映像は簡単に作ることができてしまいますし、戦争への応用もできるでしょう。これらを運営側がどのようにコントロールするのか、大きな課題です。

すでにアメリカの映画俳優組合(SAG-AFTRA)は、実在する俳優の映像を生成することについて、OpenAIに苦情を申し立てています。日本では、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)日本動画協会(東京都文京区)などが、対応を求める声明を出すなどしています。人物の肖像権に関しては、亡くなった著名人を映像に登場させるのは比較的簡単にできるようで、これがどこまで許容されるべきか、この点でも議論が出てきそうな状況です。

NHKが美空ひばりさんの姿と歌声をAIで蘇らせて番組で放送し、驚きとともに、賛否両論を巻き起こしたのは、2019年のことでした。この技術はすでに、私たち個人のもとに届きつつあります。このコラムで生成AIの動きを何度か紹介させていただきましたが、ついにここまできたかという段階にあります。生成された動画を何度もチューニングして修正し、さらに自ら編集を加えるならば、本格的な映像制作の選択肢も広がってくると思います。

AI 技術はこれから確実に日常の映像表現に入りこんでいきます。教育でも産業でも、社会のあらゆる場面で、私たちは「できること」と「大切にすべきこと」を見つめ直しながら歩んでいく必要があるように感じています。

 

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。11月22日は、新潟市在住 敬和学園大学人文学部国際文化学科教授の一戸信哉さんです。お楽しみに!

http://立石勇生 SUNNY SIDE | BSNラジオ | 2025/11/22/土 10:00-11:00 https://radiko.jp/share/?sid=BSN&t=20251122100000

この記事のWRITER

一戸信哉(新潟市在住 敬和学園大学人文学部国際文化学科教授)

一戸信哉(新潟市在住 敬和学園大学人文学部国際文化学科教授)

青森県出身。早稲田大学法学部卒業後、(財)国際通信経済研究所で情報通信の未来像を研究。情報メディア論の教鞭を取りながら、サイバー犯罪・ネット社会のいじめ等を研究。学生向けSNSワークショップを展開。サイバー脅威対策協議会会長、いじめ対策等検討会議委員長などを歴任。現在:敬和学園大学人文学部国際文化学科教授。
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