この写真は、友人が教えてくれたオーストラリアのおもちゃ売り場での1枚です。棚にはたくさんの人形が並んでいますが、よく見てみると、さまざまなタイプの子がいます。動物を連れている子や髪や肌の色が異なる子など、顔つきもそれぞれです。中でも、水色のシャツの子はほかの人形とは少し見た目が違います。友人によると、この人形はダウン症のある子を表現しているそうです。

友人が実際にオーストラリアで撮影した写真
この話を聞いて、バービー人形のことを思い出しました。バービーは、アメリカの大手玩具メーカーであるマテル社から販売されている人形で、私も子どもの頃、友達とよく遊んだおもちゃの一つです。バービーといえば、スタイルがよく、おしゃれなルックスが特徴的というイメージがあります。
しかし、社会の変化を受けて、その固定的なイメージにも少しずつ変化が起こってきたようです。近年では、肌の色や髪の毛の色、目の色といった外見だけでなく、体型やファッションもさまざまなバービーが登場しています。さらに、障がいのあるバービーや、宇宙飛行士、医師、サッカー選手など多様な職業や生き方を表現したバービーも見られるようになりました。
マテル社のホームページ*には、次のような言葉が掲載されています。
Barbie has changed over the years to be more inclusive and mirror the world around us.
(バービーは、時代とともに、よりインクルーシブで、私たちを取り巻く世界を映し出す存在へと変化してきた)
ここで注目したいのが、「インクルーシブ」という言葉です。インクルーシブは、日本語では「包摂的な」などと訳されます。持続可能な開発目標(SDGs)においても、教育(目標4)や経済(目標8)、産業(目標9)、まちづくり(目標11)、平和(目標16)など、幅広い目標に「包摂」という考え方が盛り込まれています。例えば、目標4は「すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する(英語原文より)」と掲げられています。これは、貧困や格差などの問題を解決して、みんなが学校に通えることを目指す、というだけではありません。誰もが安心して学校に通い、意思決定の場に参加し、自分の意見を自由に表明できること。さらに、文化的背景の違いや障がいの有無、性別などを理由に排除されたり周縁化されたりすることなく、誰もが公正に学びに参加できること、そういう世界・社会をみんなでつくっていこうよ、という目標です。つまり、インクルーシブとは、誰もが対等・公正に参加でき、一人ひとりの存在や声が尊重される、という考え方であるといえます。まさに、SDGsが大切にしている「誰一人取り残さない」という理念に通じています。

先ほどのオーストラリアのおもちゃ売り場の写真を見たとき、わたしは最初、「世の中には多様な人がいる、ということをおもちゃを通して伝えているんだ」と思いました。しかし、改めて考えてみると、「多様な人がいるよね」という見方そのものが、どこかで「自分」と「自分とは違う人」との間に線を引いてしまっていることに気がつきました。社会の多様性を知ることは、もちろん大切です。しかし、そこで終わるのではなくもう一歩進んで、さまざまな人がともに社会をつくる一員であると捉えること−そこに、「インクルーシブ」という語の大切な意味があるのではないでしょうか。
時代とともに変化するおもちゃから、誰もが社会の一員であり、ともに社会をつくる「創り手」な
のだという力強いメッセージを教えてもらいました。
参考:マテル社HP

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。7月11日は、にいがたNGOネットワーク国際教育研究会 RING 企画副委員長の関 愛さんです。お楽しみに!
