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カーボンオフセット(炭素埋め合わせ)とは?

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産業革命以降、石油・石炭などの化石燃料が大量に消費されるようになりました。その結果、産業革命以前に比べ、現在の大気中の二酸化炭素濃度は1.5倍に増加し、これまでで最も高いレベルに達しました。この気候変動を緩和するためには、二酸化炭素を含む温室効果ガスの排出を迅速かつ大幅に削減することが不可欠です。

二酸化炭素の排出は、サプライチェーン全体にわたる排出量を考慮する必要があります。サプライチェーンとは、原料の調達から製造、物流、販売、最終的な廃棄に至るまでの全過程を指します。例えば、「おにぎり」の場合、農家で作られたお米が工場へ運ばれ、そこでおにぎりが作られ、トラックでスーパーへ運ばれて販売されます。この一連の過程で、農家から工場、輸送、そしてスーパーに至るまでの各段階で二酸化炭素が排出されます。そのため、それぞれの段階で発生する排出量をできるだけ減らすことが重要です。また、私たち消費者も、購入する製品がどれほどの二酸化炭素を排出しているかを理解し、環境に優しい選択を意識することが求められます。

サプライチェーン

二酸化炭素の排出量をできるだけ減らす努力をしても、完全に排出をゼロにすることは難しい場合があります。では、避けられない二酸化炭素排出に対してどのような対応をすればよいのでしょうか?一つの方法は、排出される二酸化炭素に相当する量を減らす活動に投資することです。この考えが、カーボンオフセットです。

カーボンオフセットとは、市民から企業、政府に至るまでの社会の全構成員が、自分たちの温室効果ガス排出量を認識し、それを主体的に削減する努力をすることです。削減が難しい部分については、他の地域での温室効果ガス削減や吸収量(クレジットと言います)を購入するか、排出削減や吸収を目指すプロジェクトや活動を実施することにより、排出量を補填します。簡単に言うと、「知って、減らして、オフセット(埋め合わせ)する取り組み」となります。

カーボンオフセット

クレジット(排出削減・吸収量)は、温室効果ガスの排出を削減または吸収するプロジェクトを通じて生成される排出削減・吸収量の総称です(クレジットには第三者機関によって認証されているものとそうでないものがあります)。クレジット購入者は、購入代金と引き換えに二酸化炭素削減価値を獲得します。通常、カーボンクレジットの取引単位は「トン(1,000kg)-CO2」で、相場は1トンあたり1,500円から3,000円程度ですが、10,000円を超えることもあります(価格は確認が必要です)。

クレジット

カーボンオフセットは個人でも実施できます。来週、私はニューヨーク経由で本学のチリにある海外オフィスに出張します。この機会にカーボンオフセットを試みました。羽田からニューヨークまでの片道約10,900kmのフライトで、エコノミークラスでは1人あたり約675kgの二酸化炭素が排出されると計算されます。往復では約1,350kgとなります。企業によって価格設定は異なりますが、私が選んだ企業では1,350kgのオフセットに3,160円(取引手数料込み)が必要でした。この支払いによって、フライトによる二酸化炭素排出量の削減を目指すプロジェクトを支援します。本当は、ニューヨークからチリまでの往復約16,500kmの距離についてもカバーする必要があるのですが・・・。今回は、ニューヨークまでのカーボンオフセットでご勘弁を!!

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
1月20日は、長岡技術科学大学 SDGs推進室員 勝身 麻美さんです。お楽しみに。

この記事のWRITER

勝身 麻美(長岡市在住 長岡技術科学大学 SDGs推進室員)

勝身 麻美(長岡市在住 長岡技術科学大学 SDGs推進室員)

1973年 東京都生まれ、高知県育ち。理学博士。初・中・高等教育に従事、一般企業勤務(海外)を経て、現在は長岡技大国際産学連携センター所属のUEAとして、学長からSDGs企画・立案・推進スペシャリストとして特命を受ける。令和3年度科学技術分野 文部科学大臣表彰科学技術賞。
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