SDGs de はぐくむコラム

自分の心を守りながら、この道を歩いていく

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社会がまた、シンとなった。新潟県にもまん延防止等重点措置が発令された。
あぁ、という声がどこからともなく聞こえてきそうだった。
あの人のところへ訪れよう…
会いに行こう…
その日に向けて頑張ろう…
そう思ってたのに、楽しみにしていた予定や大会、旅行が中止になった方もいる。ワクワクがしぼんでしまったり、 不安がまた訪れたり、 誰も悪くないのに、イライラしてしまったり。

自分の心を守りながら、
自分を大切に、ほがらかに、しなやかに、ちゃんと自分を喜ばせながら日々を暮らしてゆくこと、とても難しい。

私の農園でも、スタッフが新型コロナウィルスの濃厚接触者となった。検査結果は陰性だったが、2週間の自宅待機。
「こういうとき、どうすんだっけ?」
慌ててそこらじゅうのガイドラインを片っぱしから読む。
毎日状況が変わり、毎日指示も変わった。
食品加工所のため、スタッフ全員の抗原検査も実施し、みんなの陰性が確認できたところで改めて自社判断で消毒作業をし、稼働を再開した。

消毒作業も、もともと当加工所はHACCPの考え方を取り入れた衛生管理計画のもと運営しているため、いつもの清掃に少し+αが増えただけで、みんな新しい気づきを得ながら(語弊があるかもしれませんが)楽しく作業していてホッとした。次はこうしよう、という新しいアイデアもポンポンと出てきた。

不安に包まれるはずのところ、スタッフみんなが参加しているグループLINEでは
「一緒にがんばろう!」
「力になれることがあればなんでも言ってね!」
と温かい言葉が飛び交い、スクロールするたびになんだかスマホを抱きしめたくなった。

休憩時間も、みんなの口からはいつも自宅待機中のそのスタッフのことを気にかける言葉が自然と出てくる日々。

この感覚、なんだか不登校になってしまった気になるあの子に思いを馳せながら、授業中、窓の外のシンとなった校庭を眺めていた、あのときの感覚と少し似ているようだった。

新型コロナでみんなそれぞれ少なからず、大小共通の痛みを味わい、誰も悪くないのに怒りっぽくなったり、イライラしたり、鬱っぽくなったりしがちだけど、共通の痛みをみんな同じように体験しているからこそ、状況を前向きに捉えながら挑戦し続けよう、より優しく生きよう、という気持ちに自分自身を整えていく感覚も、スタッフのみんなとコロナ禍で体験することができた。

それが、大切な自分を守る、ということなのかな。

私事ですが、長女(6歳)は保育園のこままわし大会で力が発揮できず、保育園でも家に帰っても泣いていた。飽き性の娘が、珍しく毎日コツコツ練習して、大技ができるようになって歓喜して。そんな日々を私もずっと見ていたので、同級生7人のうち1位にも2位にも3位にもなれなかった長女は、引きつった笑顔を見せながらも、ふとした瞬間に涙が溢れていた。

コロナがあったらあったなりに、
なかったら、なかったなりに、
嬉しいこと、悲しいこと、不安なこと、やっぱりたくさんある日々。

多分終わりはなくて、この道はずっと続いていて、この道を一歩一歩、山を超えながら、この道を自分なりに楽しく変えながら歩いていく。いろんなことがありながら、歩いていくのだ。

「がんばるあなたの隣にいるよ」

なんだか無性に、今日も十日町の小さな加工所で、干し芋を作り、袋詰めしながら、そう叫びたくなった。

この記事のWRITER

佐藤 可奈子(十日町市在住 スノーデイズファーム代表)

佐藤 可奈子(十日町市在住 スノーデイズファーム代表)

1987年、香川県生まれ。立教大学法学部卒業後、中越地震復興ボランティアに参加した十日町市池谷集落に移住。当時、6軒13人の限界集落で就農。中山間地の暮らし・仕事・子育てを地続きにした農業をめざし「スノーデイズファーム」を設立。2017年 ForbesJAPAN「日本を元気にする88人」に選出。地元男性と結婚し、2019年6月に次女となる第2子出産。 https://snowdays.jp
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