SDGs de はぐくむコラム

早熟・晩熟のスポーツにおける有利不利

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冬のオリンピック・パラリンピックも終わりました。日本は、オリンピック 金3、銀6、銅9、計18 。パラリンピック 金4、銀1、銅2、計7。こんなにメダルが取れるとは、凄いな!と感心してしまいます。
選手の活躍には、目を見張るものがありました。特に、新潟県出身のスノーボード・ハーフパイプ平野兄弟、冨田姉妹の異次元のライディングには「凄い!」としか言えませんでした。平野歩夢選手が成功させた縦3回転+横1回転のトリプルコーク1440は、まさに神業です。

「トリプルコーク1440」の説明は新潟日報デジタルプラスが分かりやすいのでご覧ください。(要会員登録)

私自身スノーボードやスキーを滑りますが、今回のハーフパイプやエアをチャレンジしようとはさすがに思いません。怖くて無理です。
選手の皆さんは、恐怖心を感じないのかな? と思っていたら、平野海祝選手のコメント「音楽がないと高く飛んでるときにビビっちゃって、着地でミスっちゃったりとか。でも音楽聴いているとアドレナリンが出て高く飛べたりとかするので。それがないとなると、ペース崩されちゃって」を聞いて、世界一高く飛ぶ海祝選手でも「ビビることもあるんだ」という新鮮な驚きでした。
音楽を聴いて高揚したり、安静したりという経験がありますが、どんな音楽を聴いているのか興味があります。

冬のオリンピックは雪上、氷上の種目しかありません。新潟に住んでいると身近に感じられたのではないでしょうか。
4月9・23日とMGC三菱ガス化学アイスアリーナでスケートの授業をしました。初心者の学生も多く、おっかなびっくりで滑り始めていましたが、氷に慣れた2日目には、後進滑走(バックスケーティング)をクリアするまで上達していました。新潟にいる学生は「雪や氷は滑るもの」を経験しているため、滑走感覚が普段から身についていて上達が早いのだと思います。

一年中滑ることのできるアイスアリーナでは、アスリートだけではなく一般の方にも大いに活用して楽しんで欲しいと思います。私は荒川静香さんのイナバウアーにチャレンジし、転倒したことが痛い思い出です。イタタタ…。

先回のコラムの続きです。
平均よりも1年以上早く身長が急に伸びる(身長のスパートと言います)ことを「早熟」、1年以上遅いことを「晩熟」と言っています。この「早熟」「晩熟」が小学校高学年から高校を卒業するまでの期間、スポーツを行う上で有利になったり不利になったりします。
「早熟」で有利になるスポーツは、体格が大きくなることで有利になるスポーツとなります。特に、身長が高いと有利なバスケットボールやバレーボールなどは最たるものです。身長だけではなく、体重(筋肉量)も増え体格的にも有利となります。小学生の集団に中学生や高校生が混じっているくらい差がある事もあり、早熟の優位性は周りの人達が成長して追いつくまで続きます。不利な部分は、今まで優位でいたのに周りに追いつかれてしまい、優位性を保持するために一層の努力が必要になるというところです。

「晩熟」で有利になるスポーツは、回転系のスポーツです。特に、女子に顕著なのが15歳を過ぎても身長のスパートがみられない方が有利なフィギュアスケートやスケートボードが挙げられます。身長が急激に伸びることで体重や体型が変わり、繊細なコントロールが狂ってしまうからです。不利な部分は、身長の高さが優位になるスポーツとなります。

「早熟」「晩熟」の有利不利は、スポーツ活動の盛んな中学生・高校生に現れるため、記録や試合結果などに大きな影響を与えてしまいます。本来ならば、身長発育が止まった成人以降がその人が持つことのできる本当のパフォーマンスを発揮する時期なのですが…。
残念ながら高校卒業と同時にスポーツ活動を止めてしまう人が多くいるため、本来の力を分からずに終了してしまいます。アスリート(競技者)ではなく健康維持・増進のために持続可能なスポーツにシフトして行くことも選択肢として考える必要があります。

また、高校卒業後に競技としてスポーツ活動を継続するには、大学、社会人、プロなどの場となってしまいます。結果をすぐに求められる場合は、無理をしすぎて怪我をしてしまい已むを得ず引退するということもあります。しかし、現在のスポーツは、競技生活を長く送り良い成績を残すためのフィジカルとメンタルのトレーニング方法が確立され、時間をかけて育成する環境が整いつつあります。
良い例が佐々木朗希選手の育成方法でしょう。

保護者の皆さんにお願いです。
お子さんが「早熟」での有利は一時で、小学生などの早い段階で期待値を高めすぎないようにしてください。また、「晩熟」のお子さんの不利はやがて解消されるから諦めないで続けることを応援してください。

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。
4月30日は、伊藤巨志さん のお話をお楽しみください。

この記事のWRITER

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

伊藤巨志(三条市在住 新潟県立大学 大学院 健康栄養学研究科 教授)

1964年、三条市生まれ。日本体育大学大学院修了【体育学修士】、新潟大学大学院博士後期課程修了【博士(教育学)】。子どもの身体発育発達学、運動遊び、健康教育を専門に研究。新潟市寺山公園子育て交流施設「い〜てらす」低学年広場を監修するなど、遊びの中で運動を身につける「遊育」を推奨。現在:人間生活学部子ども学科長。日本体育・スポーツ・健康学会、日本発育発達学会などに所属。
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