梅雨に入り、傘やレインウェア、長靴が活躍する季節になりました。「雨=いやなもの」と思われがちですが、実は子どもたちにとって“雨”は、特別でワクワクする体験の宝庫なのです。
音あそび 〜雨音を楽しむ〜
傘にポツポツ落ちる雨の音、バケツに跳ねる音、屋根をたたくリズム……。「どんな音がするかな?」と問いかけてみてください。子どもたちは耳を澄まし、感じたままを言葉にしてくれます。きっと、大人が思いもよらない表現に出会えることでしょう。
泥んこ遊び 〜五感で感じる自然〜
家庭では「服が汚れる」「場所がない」「衛生が心配」などの理由で敬遠されがちな泥んこ遊び。
だからこそ、園で思いきり楽しめる環境を整えてあることに価値があります。泥で「だんご」「ケーキ」「山」を作りながら、創造力や探究心が育ちます。
さらに、手で触れ、においを感じながら遊ぶことで、五感が刺激され感覚統合を促進。汚れても怒られないという体験は、自己肯定感の育ちにもつながります。
室内で「雨をつくろう」製作あそび
外で遊べない雨の日は、室内に雨を降らせてみませんか?例えば、青いビニールテープをロープに貼り、先端に手作りの雨粒を吊すと、まるで本物の雨のれん。雨粒の色や形を考えることで、想像力や創造的思考が自然と育ちます。作業に集中することで持続力も高まり、完成した時の達成感は格別です。
絵本の世界を旅しよう
雨をテーマにした絵本の読み聞かせも、子どもたちの想像を広げる素敵な時間。『カエルのおでかけ』『はっぱのおうち』『どしゃぶり』『コッコさんとあめふり』など、梅雨にぴったりの絵本がたくさんあります。絵本の世界を再現する「ごっこあそび」に発展させても楽しいですね。
レインウェアでお散歩 & 自然観察
雨の日だからこそできる「特別なお散歩」もおすすめです。傘や長靴を履いて、水たまりをジャンプしたり、カエルやカタツムリを探したり。五感を使って自然にふれあうことで、子どもたちは身近な生き物や季節の移ろいに興味をもち始めます。
カエルの真似が広げる世界
皆さん、カエルの真似ってできますか?授業で「カエルの真似をするとしたら、ピョンピョン跳ぶ?スイスイ泳ぐ?」と学生約100人に尋ねたところ、全員が「跳ぶ」と答えました。
ところが、ある園での出来事。
3歳未満児クラスの担任が、水槽に入れたカエルの泳ぐ姿を子どもたちに見せたところ、なんとその様子を“泳ぐ動き”で真似し始めたのです。保護者のお迎え時にも、フロアで泳ぎながら玄関に向かった子もいたそうです。同じカエルでも、「どう見せるか」で子どもの表現は変わります。これは大人の“見せ方の工夫”が、子どもの世界を豊かにする一例です。
ある年、5歳児クラスの運動指導で園を訪れたときのこと。遅れてきた園児に「どうしたの?」と聞くと、「お散歩中にオタマジャクシを見つけたから、みんなで観てた」との答え。これはチャンス!と思い、「オタマジャクシはどうしてたの?」と聞くと、フロアで泳ぐ真似をしてくれました。
「大きくなるとどうなる?」
「カエルになる!」
「いきなり?」
「足が生えて…次は手が生えて…」と、体全体で成長の過程を表現してくれました。そのまま「カエル跳びしよう!」と運動遊びへと発展。子どもの好奇心と観察力が、自然と学びや運動につながった瞬間でした。
梅雨の時期は、外遊びが制限される季節でもありますが、視点を変えれば“雨の日だけの豊かな体験”にあふれています。子どもたちの感性、表現力、創造力を引き出す絶好のチャンスです。雨とともに、心にたくさんの「たのしい」が降り注ぎますように。
夏本番を迎える時期に、県立大学子ども学科の学生によるイベントへ、皆さまのお越しを心よりお待ちしております。
* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。6月21日は、新潟県立大学学生部長 大学院 健康栄養学研究科 教授 人間生活学部 こども学科 教授の伊藤巨志さんです。お楽しみに!