2023年6月、父と母が暮らしていた場所に、小さなカフェをオープンした。その建物は、名古屋にいる二番目の弟・清水裕二がデザインしたものだ。
「かつて父と母が表具店を営んでいたころの、道路に面したミセ(店)空間の透明性をそのまま受け継いでいる。近所の人たちは、土間の長い框(かまち)に腰掛け世間話をして去っていく。ここは町の縁側」そんなコンセプトで作られている。間口が広く、土間と居住スペースは格子戸でゆるやかに仕切られ、外から何となく中の様子がうかがえる。近所の人がふらりと立ち寄りやすい空間だ。

house1015外観
父と母が亡くなったあと、この場所をどう使おうか考えた。
せっかくなら、建物の持つ「縁側」というコンセプトを生かし、地域の人たちが気軽に立ち寄って「お茶飲み」のできる場所にしたい。そんな思いから始めたのが、house1015だった。

カフェスペース
ところが、2024年1月1日の能登半島地震で、私たち自身が被災した。落ち着かない日々が突然やってきて、半年ほど続けたところで、いったんcloseすることにした。
最初は「一年くらいで再開できるだろう」と思っていたが、復興は思うようには進まなかった。
あれから時間が過ぎ、ようやく「そろそろ再開しようか」と思えるところまできた。
名前の「house1015」は、この場所の番地からつけた。以前は、私と一番目の弟の妻を中心に営んでいたが、今回の再開では、退職した夫も加わることになった。
こども食堂を始めた頃、「サードプレイス」という言葉を知った。
家庭でも学校でもない、子どもたちの第三の居場所、という意味だった。
調べてみると、1989年にアメリカの社会学者レイ・オルデンバーグ氏が提唱した概念で、家庭を「ファーストプレイス」、仕事や学校を「セカンドプレイス」とし、それ以外に、人が自由に交流し、ほっとできる場所を「サードプレイス」と呼んだのだという。
カフェや公園、図書館など形はさまざまだが、「自分らしくいられる場所」のことらしい。そして、それは子どもだけでなく、おとなにも必要なのだと気づいた。
昔は、地域のあちこちに「お茶飲み」があった。誰かの家に集まり、お茶を飲みながら世間話をする。その中で情報交換があり、人とのつながりが生まれていた。
でも今は、そんな風景も少なくなったように思う。
だったら、この場所をもう一度「お茶飲みのできる場」にしてみよう。それが、house1015の始まりだった。

ランチ
オープンしてみると、まちづくりセンターの講座帰りに立ち寄る人がいたり、座卓スペースでは赤ちゃん連れのお母さんたちがランチをしながら楽しそうに話していたりした。
弟や夫がいる土曜日には、男性たちもふらりとやってきて、コーヒーを飲みながら世間話をしていく。
店内には姪が描いた油絵が飾られ、少し不思議なアート空間が広がっている。棚には古いレコードとプレーヤー、大きなスピーカー。レコード世代には、どこか懐かしい場所でもある。

絵本
赤ちゃん連れの方が集うスペースには、図書館から借りた絵本を置き、毎月テーマごとに選書してもらっていた。

座卓スペース
house1015が、誰かにとっての「サードプレイス」になれたらうれしい。
さて、そろそろ重い腰を上げて、再開の準備に取りかかろうかな。

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。5月16日は、新潟市在住 にいがた子育ちステイション理事長 /子育て支援ファシリテーターの立松有美さんです。お楽しみに!
