2012年夏、佐渡の田んぼでトキの家族に出会った。
2008年にはじまった放鳥で自然に放たれたトキがはじめて自然繁殖に成功した、その幼鳥の家族だ。
大きさも親と変わらず、ほとんど見た目も成長と変わらない。
よく見ると目の周りの色がオレンジ色に近く、全体の羽の色も淡い。
巣立った後も親は幼鳥と一緒にいて様々なことを教えていくのだ。
2012年に自然繁殖で生まれたトキの子どもは全部で8羽、これらの子どもには足環がつけられていない。
2013年秋、田んぼで足環のないトキに出会った。
生まれて1年数か月たった若鳥であることは間違いない。
若鳥は食欲旺盛で、田んぼの泥の中にのべつくちばしを突っ込み、たとえば5分間に7回エサを取ることに成功していた。
くちばしも深く泥に入れているので顔も泥だらけだ。
食べることは生きること、若鳥はたくましく生きていた。
これはトキだけのことではない。
美しい渡り鳥も渓谷で子孫を残そうとするものも、断崖の岩の上で子育てするものもみな一瞬一瞬真剣だ。
私たちが見ようとすれば生き物たちが懸命に生きる姿にで会うことができるのだ。
それぞれを育む多様な環境が新潟の自然にはある。
私たちはその自然を見守り未来へつなぐ大切な時間を生き物たちと共に生きている。