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【特別寄稿】新型コロナウィルス、デマに負けない行動を心がけよう

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2020年2月29日、新潟でも新型コロナウイルスの感染者が出たと発表されました。首都圏との往来が続く中で、感染者が出るのは時間の問題と見られており、今後のことは見通せませんが、慎重かつ冷静に、対処したいところです。
このように人々が不安になっている状況では、それにつけこむような「デマ」が、ソーシャルメディア上でさまざま広がります。こうした「デマ」に対する私達ひとりひとりの行動も、いまとても大事になります。

「コロナウイルスは熱に弱く、26~27度のお湯を飲むと殺菌効果がある」という間違った情報が、かなり話題になりました。このほかにもさまざまな「予防法」が話題となり、その間違いが指摘されています。
新型コロナウイルスの実態が必ずしもよくわからない状況で、どのように「予防」ができるのか。手洗い・うがい以上に予防する方法があるのではないか。手っ取り早い解決策を求める人々に、「27度のお湯を飲む」というわかりやすいデマが投下され、それが拡散したということになります。

トイレットペーパーなどの物資が不足するという噂も広がりました。予防法とともに、物流が途絶えて日用品が手に入らなくなるという不安にも、「デマ」は入り込みやすいです。
マスクが不足したのだから、トイレットペーパーも不足するはずというまことしやかな情報は、熊本でまず広まり、そこから全国に広まっていきます。ドラッグストアの棚からトイレットペーパーが消えたという写真を多くの人が撮り、「デマにだまされるな」というTweetとともに写真をTwitterに投稿すると、さらにその写真を見て不安になった人が買いに走るという悪循環も見られました。「デマとわかっているけど、心配で買ってしまう」という消費者の様子も報じられています。

その後「在庫は潤沢」という報道が出て、デマを打ち消そうとしますが、一度広まってしまった噂を止めるには、どうしても時間がかかります。

デマに負けない情報リテラシーといっても、すべての人が同じレベルの情報収集・判断力を持つことは難しいです。未知のウイルスに対処しているわけですから、「専門家」と称する人たちのいうことが、100%正しいわけでもありません。まずここでは最低限の対処方法を提案します。

1.「ニュース検索」で、情報の正確さをたしかめよう
「26~27度のお湯を飲む」や「トイレットペーパーが不足」という情報が流れてきたとします。有益な情報や緊急の情報であれば、すぐに回りに広めたくなりますが、一度立ち止まり、検索をしてみましょう。たとえばいま(3/2の10時頃)、「26~27度のお湯を飲む」や「トイレットペーパー 不足」をGoogleに入れて「ニュース検索」(検索結果のページの上部に出てくる「ニュース」をクリックしてください)をすると、この情報がデマであるという記事が多数出てきます。これらの記事を読んでもなお、ゆるま湯を飲もうとかトイレットペーパーを買いだめようとは思わないでしょう。

TwitterやLINEで回ってきた情報が間違っていて、ニュース記事が正しいと、断定していいとは限りませんが、ひとまずの「たしからしさ」は、ニュース記事の側にあると思っていいと思います。

2.誰が書いているかをたしかめよう/知らない組織名も検索してみよう
「ニュース記事」が正しいと書きましたが、誰が発信したものを信じたらいいのでしょうか。もちろん、より正確な情報は、厚生労働省や国立感染症研究所などの公的機関の情報にあたるべきですし、これらの機関もまた、わかりやすい情報発信につとめています。ただ、多くの人々は、日頃のニュースへの接触の中から、必要な情報を得ようとするでしょう。その場合にも、「誰が書いているか」は、最低限確認しておく必要があります。
ニュースについては、新潟県民なら、BSN、NHKのなどの放送局や新潟日報などの新聞社からの情報なら(ひとまず)大丈夫だと思えるかもしれません。では、ウェブニュースからの情報ならばどうでしょうか。さまざまなニュース媒体への信頼度は、ひとりひとりの日頃の情報収集によって変わってきます(ネットにも信頼できるメディアはあります)。意外に多いと感じるのが、すべてを「ネット」と括ってしまう人たちです。おそらく「テレビ」「ラジオ」「新聞」で知ったという言い方もあったわけですから、「ネット」というのがあっても当然ともいえますが、「ネット」の情報の信頼度はさまざまなのに、それらをすべて「ネット」でくくり、「ネットに出ていた」と理解してしまうのは危険です。まずは「誰が書いているか」を確かめましょう。

情報の発信源は、よく知っている新聞や放送局などのメディアであることもありますし、初めて見るネットメディアであることもありますし、個人の専門家が書いていることもあります。知らないメディアからのニュースである場合には、同じニュースを自分が信頼できるメディアも報じているかどうか、確かめてみることも重要です。
また記事の中には厚生労働省などの公的機関からの発表であると書いてあることもあります。調べていくうちに、厚生労働省などの公的機関の書いている情報にたどり着くこともあるでしょう。

知らない「メディア」や「公的機関」からの情報である場合には、その名前自体を検索してみましょう。名前を検索してみると、著名メディアや公的機関の名前に似せた団体であることもあります。
今回は、国立感染症研究所(NIID)に似た「国立感染症予防センター」を名乗るメールが出回ったと報じられています。「以下通知をご確認いただき、感染予防策についてよろしくお願いします。<対策はこちら>」という表記のあと、URLをクリックさせるものです。日頃私達は、「国立感染症研究所」という組織の情報に頻繁に接しているわけではないので、「国立感染症予防センター」という組織が存在しないということに、なかなか気がつきません。ただ「あれ、こんな名前だったっけ?」と思ったときには、一度「国立感染症予防センター」を検索エンジンに入力してみるといいでしょう。この組織が存在しないことに気がつくはずです。

BSN公式サイトの新型コロナ特別ページ

3.その情報を広げてもいいか、よく考えよう
新型コロナウイルスのウイルスについて、いま100%の確信を持って言えることは、あまりありません。それゆえに私達は不安にかられています。そうであるからこそ、予防に役立ちそうな情報、気をつけなければならないとする情報には、すぐに飛びつきたくなるし、周りの人たちに広めたくなります。しかしこの状況は同時に、デマが広まりやすい状態でもあります。

デマで社会が混乱してしまわないよう、自分が発信する情報のたしかさについても、責任ある判断が必要です。不安に駆られた私達は、不確かな情報に基づいて行動をとることはあるかもしれません。TwitterやLINEで、周りに情報を広げていくことができるいま、自分の行動を律すると同時に、それ以上に、その行動のもとになった情報を周りに広げ、その気持を周りに広げていくべきかどうか、よく考える必要があります。たとえ、不安のあまり買いすぎてしまったり、何もなくなったお店の棚を写真に撮ってしまったとしても、そんな自分の衝動的な行動は、世の中に広めるべきではないということになります。

今回の新型コロナウイルスは、潜伏期間が長く、じっくりと社会に浸透してくる恐怖があります。しかしそれゆえに、一刻一秒を争って、私達個人が見聞きした情報を共有するべき状況でもありません。じっくりと情報のたしかさに向き合いながら、リスクを減らしていくための試みを続けていくべきということになるでしょう。

この記事のWRITER

一戸信哉(新潟市在住 敬和学園大学人文学部国際文化学科教授)

一戸信哉(新潟市在住 敬和学園大学人文学部国際文化学科教授)

青森県出身。早稲田大学法学部卒業後、(財)国際通信経済研究所で情報通信の未来像を研究。情報メディア論の教鞭を取りながら、サイバー犯罪・ネット社会のいじめ等を研究。学生向けSNSワークショップを展開。サイバー脅威対策協議会会長、いじめ対策等検討会議委員長などを歴任。現在:敬和学園大学人文学部国際文化学科教授。
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