いきものがたり

Vol.44 ヨシ原で育む命

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阿賀野川河口。ヨシ原が育った6月、オオヨシキリが盛んに動いている。

オオヨシキリはウグイスの仲間だが、ウグイスが水平に近い姿勢で藪の間を動いて虫を取るのに対し、オオヨシキリは垂直に伸びるヨシと結びついて生きているので姿勢も違って見える。

そしてこの時期、ヨシの間に作った巣で育ったヒナが、巣から出てくるのだ。さえずる親がヨシの上部で鳴くのに対し、ヒナは茎の中からゆっくりよじ登ってくる。そしてそのヒナに親がエサを持ってきて食べさせているのだ。ヒナは親と同じくらいの大きさに成長しているが、くちばしの中は黄色で、全体の感じも幼い。まだ自分の力でエサを取ることができないのだ。親からエサを食べさせられても羽を震わせ、もっともっととせがんでいる。親はさらにせっせとエサを探している。ちょうどこの時期は虫も大量に発生し好都合。勢いよくやってきた親がヒナのもとへやってきてヨシにつかまると、その重さで茎は大きくしなって波打つ。そんな中でも親はヒナの口の中に的確にエサを入れてやって、また出かけていく。

行動範囲はヨシ原のごく一部で、人間から見れば本当に狭いエリアなのだが、オオヨシキリの親子にとっては命を育むに充分な世界だ。ヒナが育ち自らエサが取れるようになればこの光景を見ることは出来ない。季節は駆け足で夏に向かっている。

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