いきものがたり

Vol.53 ハヤブサ②子育てのはじまり

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3月下旬、断崖絶壁に1羽のハヤブサがやってきた。メスだ。メスはしきりにあたりをキョロキョロしている。特に下の方を覗き込んだりしている。何を見ているのか・・・しばらくしてその理由がわかった。オスがメスの気をひくようにメスの周りを旋回しているのだ。次第に上昇してメスを中心にグルグル回り始めた。これは「ディスプレイフライト」といってオスが自分を誇示する行動で、これからの繁殖にむけて2羽が絆を確かめ合うのだという。そのうちメスも飛び上がり一緒に旋回をはじめた・・・

<およそ1ヶ月後>5月はじめ断崖の岩の小さな出っ張りをハヤブサのペアが巣にしていた。ハヤブサは何か巣材を運んで巣を作るのではなく岩棚そのものを巣にする。その中に動くものがいた。どうやら親の1羽がうずくまっている。オスだった。別の場所に1羽止まっていた。こちらはメス。巣にいたのはオスだった。しばらくするとメスが巣にやってきた・・・すると中にいたオスが外に飛び出していった。巣の中には卵なのかヒナなのかがいるのは確実。親はこの時期必ずどちらかが巣にいて卵を温めるか、ヒナの体温を下がらないように温めなければならない。だからこそ交代で親は巣を守っているのだ。交代してエサをとりにいったりするのだ。この日は強い雨が降りしきっていた。親は濡れていても巣を守っている。子育ては親にとって真剣勝負の共同事業だ。

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