SDGs de はぐくむコラム

100年後の子どもたちへ残したい新潟の自然 -「今」を未来へ届ける博物館の仕事-

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みなさんは、100年前の新潟県にどんな生きものがいたか知っていますか?
私たちが生まれるずっと前の自然の様子を、実際に見た人はもうほとんど残っていません。しかし、博物館に残された標本は、その時代の自然を現代に伝えてくれます。

今年5月11日、十日町市内で「100年後の市民に伝えたい!十日町市の自慢の自然探し」という自然観察会を開催しました。これは、「森の学校」キョロロが3月に博物館法に基づく「登録博物館」に登録されたことを受け、博物館登録記念事業として実施したものです。
この観察会では、2026年の十日町市の自然の「今」を、市民の皆さんと一緒に記録し、100年後の市民へ伝える資料として残すことを目的としました。博物館には、資料を集め・調べ・守り・未来へ伝えるという大切な役割がありますが、今回の自然観察会は、その仕事に市民の皆さんにも参加していただく特別企画。博物館登録を機に、資料を未来へ残すという博物館の役割を、市民の皆さんに体験していただこうと企画しました。

標本とラベルの大切さ
キョロロの収蔵コレクションの中には、最も古い標本で1913年に採集されたチョウの標本があります。まさに100年以上前に採集され、保存され、113年後の2026年を生きる私たちは、過去の自然の様子を標本から知ることができます。こうした標本は、過去にどのような生きものがいたのかを知るための貴重な資料です。
標本が自然史資料として価値を持つためには、「いつ・どこで・誰が・何を」採集したのかを記したラベルが欠かせません。100年前の方が、この情報をしっかり記録していたからこそ、私たちは100年前にその生きものが生息していたことを確かな記録として知ることができます。イベントの冒頭では学芸員からラベルの大切さについて参加者と共有しました。

標本は過去にその生きものがいた確かな記録

速報値107種!身近な自然の豊かさを実感
5月11日の観察会のテーマは【市街地の自然】。会場は十日町市博物館近くの緑道広場と郷土植物園といった市街地の自然の中です。参加者の皆さんは、網を振ったり、草むら・落ち葉の下・木の根元をのぞき込んだりしながら、思い思いに生きものを探しました。
採集した生きものは、チャック付き袋に入れて壁に張り出しました。今回確認された生きものは、植物や昆虫、クモ類、貝類、ムカデやヤスデの仲間など、速報値で107種!一見すると生きものが少なそうに見える市街地の中にも、実に多様な生きものたちが暮らしていることがわかりました。採集後には、学芸員らによるミニ解説も行い、それぞれの生きものの特徴や暮らしについて学びました。

市街地の自然の中で生きもの探し

100年後の市民へメッセージ
最後に、参加者それぞれが採集した生きものの中から1種を選び、採集情報(日時・場所・採集者・種名)とともに、100年後にこの標本を見る市民に向けたメッセージを書きました。
「100年後もカタツムリが生きていける環境がありますように」
「子どもの頃から遊び相手だったアマガエル、100年後もたくさんいてくれますように」
「ナガメはお気に入りのカメムシ。100年後もいますか?」
「在来種の生きものをずっと守ってください」
など、参加された皆さんそれぞれが、生きものへの思いや未来への願いを込めてメッセージを書いてくださいました。こうした言葉は、標本ラベルとしての情報に加えて、「2026年の十日町に暮らした人々が、どのような自然を大切に思っていたのか」を100年後の市民に伝える、大切なメッセージになることでしょう。

市街地の自然の中でいろいろな生き物を発見しました

未来へ残す地域の自然
今回集めた標本とメッセージは、後日キョロロで標本化し、博物館資料として保管・活用していきます。100年後の誰かが、この標本とメッセージを手に取り、2026年の十日町市の自然と、そこに暮らす人々の思いに触れてくれるかもしれません。それは、2026年の十日町市にどんな生きものがいて、人々がどんな自然を大切に思っていたのかを伝える「未来への手紙」でもあります。身近な自然を観察する楽しさとともに、未来へ資料を残す博物館の役割を体験していただける観察会となりました。

100年後の市民に向けたメッセージを記入しました

SDGsには「陸の豊かさも守ろう(目標15)」という目標があります。しかし、生物多様性を守るためには、まず自分たちの地域にどんな生きものが暮らしているのかを知り、その記録を未来へ引き継いでいくことが欠かせません。SDGsの目標年は2030年ですが、持続可能な社会づくりに本当のゴールはありません。2030年はあくまでも通過点であり、その先の未来へ自然や文化を引き継ぎ続けていくことこそが大切です。

今回、参加者の皆さんが残した標本やメッセージは、100年後の市民のための資料でもあります。100年前の人々が残してくれた標本によって、私たちが当時の自然を知ることができるように、今回の記録もまた未来の誰かへ受け継がれていくでしょう。身近な生きものに目を向け、その存在を記録し、未来へ伝えること。それは、未来の世代へ自然のバトンを渡す取り組みであり、持続可能な社会を支える大切な一歩なのです。博物館は、そのバトンを未来へつなぐ場所であり、市民の皆さんと共にその役割を担う場所でもあります。

100年後も、子どもたちが身近な自然を楽しめる場所があることを願います

この観察会は、7月5日(会場:まつだい「農舞台」フィールドミュージアム周辺)、9月6日(会場:清津川フレッシュパーク周辺)、9月23日(会場:笹山縄文広場周辺)にも開催します。詳細はHP・SNSなどをご覧ください。未来へ残す、地域の自然の「今」を、みんなで楽しく記録してみませんか?

 

    

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。6月27日は、越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員の小林誠さんです。お楽しみに!

http://立石勇生 SUNNY SIDE | BSNラジオ | 2026/06/27/土 10:00-11:00 https://radiko.jp/share/?sid=BSN&t=20260627100000

この記事のWRITER

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

小林誠(十日町市在住 越後松之山「森の学校」キョロロ 学芸員)

1980年、長岡市生まれ。北海道大学大学院環境科学院博士後期課程修了(環境科学博士)。大学時代は北海道をフィールドに北限のブナ林を研究。現在、十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロ学芸員。里山の生物多様性をキーワードに教育普及、体験交流、観光や産業などの側面から、地域博物館を活用した地域づくりに挑戦中。2児の父親。
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