東京で暮らしている僕だが、ディグモグコーヒーの焙煎もあり、頻繁に上越市と東京を行き来している。
18歳まで上越市の、ほぼ自転車か徒歩圏内で生活していた僕にとって、少し大げさだが東京は遠くの「あの街」、テレビや雑誌の中の街だった。
上越妙高駅が出来てからは、東京上越間も新幹線の移動時間だけで言ったらちょうど2時間ほど。少しぼんやりしていたらすぐに到着するくらいになった。
上越での移動を考えて、東京から車で往復することも多いが、高速道路を使って4時間。そう話すと「大変だ」と驚く人もいるが、往復することに慣れてきたせいか、その移動も以前ほどのストレスを感じない。僕にとって東京も上越も馴染みのある「この街」で、どちらも安心感があり居心地が良い。
そんな上越東京間を頻繁に往復している僕だが、様々な理由で全国いろいろな街に行く。
地方での展覧会やワークショップ、講演会や大学の授業、そして川崎フロンターレのアウェイの応援などでもだ。
初めて訪れる街は、最初いつも落ち着かない。知らない街という圧倒的なアウェイ感におそわれる。それでもホテルを出て、散歩に出かけ、たまたま見つけた場所に立ち寄り、事前に友人から教えてもらったお店に行ってみる。そうすると何かしらの発見があるし、わずかでもその街を知れることは楽しい。訪れる度にそんなことを繰り返していると、初めての時に感じていたアウェイ感がずいぶん薄らいでいたことに気づく。

数年前から大学の授業を持っていて、定期的に京都に通っている。京都はもちろん歴史のある街だから随所に古い建物や神社仏閣もあり、真夏の暑い時期を除けば散歩をするには最高のロケーションだ。滞在時間に余裕がある時は鴨川沿いをのんびり歩いたりするのも気持ちがいい。時々マップで発見した隠れ家のようなカフェで休憩すると、まるで自分だけの特別な場所を見つけたようで得した気分になる。そんな探検気分の散歩が、普段の仕事の忙しさから気持ちを解放してくれる気がするのだ。
京都には毎年定期的に通っているから、なんとなく馴染みのお店や人ができて「あの街」だった京都の街が、僕の中では「この街」に変わっていった。
実は僕にとって新潟市もあまり馴染みのない「あの街」だった。上越市に住んでいたのは高校生までで、新潟市に行ったことは小学校の修学旅行のわずか一回だけ。当時、同級生とグループで西堀ローサを歩いた記憶がかすかにあるだけだった。上京してからも、東京と上越の往復ばかりで、あまり新潟市に行くことがなかった。
ところが、10数年前に新潟市で広告の審査会に誘ってもらったことから、徐々に新潟市に行くことが増えた。滞在の度に時間があると散歩するのだが、個性的なお店も多くそんな発見がやはり楽しい。
それから、できるだけ新潟市を訪れる機会を作りたいと、作品展示やトークイベント、ワークショップなどを積極的に開催するようになった。京都と同様に訪れる回数が増えると徐々に馴染みの場所が増えていく。またそんな場所や人に会いたいと、今では上越市から新潟市まで日帰りで車の往復することもよくあるくらいだ。
気づくともう新潟市も僕にとって「あの街」ではなく「この街」になっていた。
「あの街」だった街とのほんの少しのふれあいで、「この街」に変わっていく。
まるで、知り合った人と徐々に友だちになっていくように。街や人とふれあうことで、気づきや発見が多くなり、自分の世界もどんどん広がっていく。
これからも自分の中の地図を広げるように、もっともっと新しい街に行ってみたいと思う。

上越しか知らなかった僕にとって「あの街」だった新潟市が「この街」になったように、
新潟市や県内各地の皆さん、たまにはぜひ、上越市にお出かけなんていかがでしょうか。

* BSNラジオ 土曜日午前10時「立石勇生 SUNNY SIDE」の オープニングナンバーの後に「はぐくむコラム」をお伝えしています。7月4日は、「ハレッタ」のキャラクターデザインを手がけた、イラストレーターでアートディレクターの大塚いちおさんです。お楽しみに!
